生物多様性の保全に向けて

更新日:2023年12月06日

公開日:2021年04月01日

生物多様性を保全すること

生物多様性とは…

 生物多様性とは、生きものが持つ豊かな「個性」と、長い歴史の中での「つながり」のことを言います。
 生物多様性に関する条約では「すべての生きものの間には違いがある」と定義されており、【1】生態系の多様性、【2】種(種間)の多様性、【3】遺伝子(種内)の多様性という
3つのレベルで多様性があるとされています。

【1】生態系の多様性

森林、河川、サンゴ礁など、いろいろなタイプの生態系が各々の地域に形成されていることをいいます。

生態系を示すイラスト

【2】種(種間)の多様性

地球上でいろいろな動物、植物や菌類などが生息・生育していることをいいます。

種(種間)の多様性を示すイラスト

【3】遺伝子(種内)の多様性

 同じ種であっても、個体や個体群の間では遺伝子レベルで違いがあることをいいます。
 例えば、アサリの貝殻は個体によって様々な模様がありますが、これは遺伝子の違いによるものです。

左:遺伝子の違いから、さまざまな模様が存在するアサリ。右:色や柄がそれぞれ異なるナミテントウ。

 私たち人間を含めた地球上のすべての生きものは、自然の長い歴史の中で、様々な遺伝子(遺伝子の多様性)が、様々な動植物や菌類などを生み(種の多様性)、それぞれの種が森林や河川などに集ま、生態系を作り上げる(生態系の多様性)ことで、生物多様性を維持してきました。

(画像転載元:生物多様性マガジン『Iki・Tomo』SPECIAL ISSUE<特別号> 2017 夏号画像は発行元の許可を得て掲載しています。

生物多様性の保全の必要性

 私たちは、自然やそこに住む生きもの(生態系)から、沢山の恵みを受けて暮らしています。
これを難しい言葉で生態系サービスと言います。

 例えば、水や食料、木材や燃料などの資源は、私たちが生きていくには重要なものですが、これは生態系が機能して初めて受けられるサービスです(供給サービス)。

 他にも水がきれいになることや人が快適に住める気候になる、自然災害が防止される機能(調整サービス)や、美しい自然の景色の中で精神的な癒しを得ることができること(文化的サービス)も、生態系が維持されていることで受けられるサービスです。

 また、これらのサービスは、植物の光合成から大気中に酸素が発生すること、生物の死骸や植物の葉が微生物に分解され土壌の栄養が豊かになることなどの、基礎的なサービスがあって初めて存在をします(基盤サービス)。
 

 では、もし生物多様性が失われたら、私たちはどうなるでしょうか。


 今、私たちが暮らしている世界は、「様々な遺伝子」から生まれた「様々な種」が集まって育んだ「様々な生態系」のバランスが維持されて存在しています。
 つまり、生物多様性が失われることで生態系は崩れ、生態系が崩れることで私たちは自然からの恵みを受けることができなくなってしまいます。
この先、私たちが生きていく中で、持続的に自然から恵みを受けるには、生物多様性を保全し生態系のバランスを維持し続けていくことが必要になるのです。

生物多様性に迫る危機

 現在、地球上には推定3,000万種、日本だけでも30万種を超える生物が存在しているといわれています。
 しかし、2019年にIPBES(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)から発表された報告書では、人類の活動によって「約100万種の動植物が絶滅危機」にあり、「その絶滅速度は過去1,000万年間の平均に比べて、10~100倍以上」と報告がありました。生物多様性に危機が迫っています。

絶滅危惧種のイラスト

(画像転載元:生物多様性マガジン『Iki・Tomo』SPECIAL ISSUE<特別号> 2017 夏号
 画像は発行元の許可を得て掲載しています。また、画像内の数値は発行当時のものです。

第1の危機 - 開発など人間活動による危機 -

 第1の危機として、開発や乱獲など、人の活動が引き起こす生物多様性への影響です。

 干潟などの沿岸域における開発(埋立など)、森林の多用途への転用などの土地利用の変化は、多くの生物にとって生息・生育環境の悪化をもたらし、また、観賞用や商業的な利用目的による、乱獲や過剰な採取は個体数の減少をもたらしました。

第2の危機 - 自然に対する働きかけの縮小による危機 -

 第2の危機は、第1の危機とは逆に、自然に対する人の働きかけが縮小・撤退することによる影響です。

 例えば、農地、水路、ため池、二次林と人工林、草原などで構成される「里地里山」は、以前は人の経済活動としての資源(薪炭林や農用林など)があり、人の手によって維持管理されることで、特有の生きものが育まれてきました。
また、氾濫原(注)などの自然の攪乱を受けてきた地域の、代わりとなる生きものの生息・生育場所としての位置づけもあったと考えられます。
しかし、 このような地域では産業構造や資源利用の変化、人口減少や高齢化に伴い、人から自然への働きかけが縮小する危機に直面しています。

(注)洪水時に氾濫水に覆われる川の両岸の比較的平坦で低い土地

第3の危機 - 人間により持ち込まれたものによる危機-

 第3の危機は、外来種や化学物質など、人間が近代的な生活を送るようになったことで持ち込まれたものによる危機です。

外来種については、マングースやアライグマなど、野生生物が持つ本来の移動能力を越えて、意図的・非意図的を問わず「人によって国外や国内の他の地域から導入された生物」が、地域固有の生態系を改変し、大きな脅威になっています。

 また、化学物質については、20世紀に入ってから急速に開発・普及が進んだことで、生態系が多くの化学物質にさらされる状況が生じています。化学物質の利用は人間生活に大きな利便性をもたらしてきた一方で、中には生物への有害性を有するとともに環境中に広く存在するものがあり、生態系への影響が指摘されています。
化学物質による生態系への影響については、多くのものがいまだ明らかではありませんが、私たちが気づかないうちに生態系に影響を与えている恐れがあります。

第4の危機 - 地球環境の変化による危機 -

 第4の危機は、地球温暖化などの地球環境の変化による生物多様性への影響です。

 地球温暖化のほか、強い台風が増えることや降水量の変化などの気候変動、海洋の一次生産の減少や酸性化などの地球環境の変化は、生物多様性に深刻な影響を与える可能性があり、また、その影響を完全に避けることはできないと考えられています。
 さらに、地球環境の変化に伴う生物多様性の変化は、人間生活や社会経済へも大きな影響を及ぼすことが予測されています。

厚木市が取り組む生物多様性の保全

生物多様性あつぎ戦略の策定

 厚木市では、豊かな自然やその恵みを将来に継承していくため、平成25年3月に「生物多様性あつぎ戦略」を策定し、その目指すべき将来像を「未来へつなげよう 自然のめぐみと暮らすまち あつぎ」と掲げました。
 3つの基本目標と8つの行動戦略を設定し、様々な手法で生物多様性の保全に取り組んでいます(戦略の詳細は関連ページから確認することができます)。

生物多様性あつぎ戦略 未来へつなげよう自然のめぐみと暮らすまち あつぎ

さがみ自然フォーラムの開催

 生物多様性あつぎ戦略の推進事業として、毎年度2月に(非)神奈川県自然保護協会との共催で、「さがみ自然フォーラム」を開催しています。
 第19回目の開催となった令和元年度は、アミューあつぎを会場に『ムシをムシしていいの?-赤とんぼを通して考えよう-』をテーマにして、生物多様性の保全に関わる学生や団体等のパネル展示や活動発表、生物多様性に関する講演会などを実施し、広く普及啓発を行いました。

(注)令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響により展示は中止。
展示予定団体の活動をまとめた冊子を発行。

第19回さがみ自然フォーラムのチラシ
さがみ自然フォーラムの会場の展示資料を見学している来場者の写真
生物多様性に関する講演会で講師の話を聞いている来場者の写真

厚木市レッドデータブックの作成

レッドデータブックとは、生息又は生育する野生生物について、個々の種の絶滅危険度を評価し、絶滅のおそれがある種を選定して情報をまとめたものです。
厚木市では生物多様性あつぎ戦略の取組の1つとして、市内の野生生物の現状を把握し、その保護と生物多様性の保全を図るため、平成26年度から市独自のレッドデータブックの作成に取組み、令和2年度末に「厚木市レッドデータブック」が完成しました(関連ページを参照)。

オオタカ等の観察調査

 オオタカは、神奈川県レッドデータブックで繁殖期を絶滅危惧2類、非繁殖期を希少種と指定されている鳥類です。
 広い範囲の中に、森林や草地などの異なる自然環境がセットで保全されていないと生息することができないため、生物多様性の指標とされています。
 厚木市では市内のNPO法人に調査を依頼し、過去に市内で営巣が確認されている箇所で、オオタカを指標とした生態の観察や、オオタカの生息・生育などの周辺環境変化の観察を行っています。

外来種への対策

 厚木市では外来種への対策として、自治会や学校からの協力を元に協働で駆除活動を行っているほか、スマ報などを通じて市民等のみなさんから寄せられた情報による駆除活動も行っています(オオキンケイギクなど特定外来種を対象に駆除を進めています)。

芝生の広場で駆除したオオキンケイギクを大きなビニール袋に集めている写真

オオキンケイギク(特定外来種)駆除活動の様子

黄色いオオキンケイギクの花の写真

オオキンケイギク

厚木市民情報提供システム、スマ報のチラシ

(スマ報の詳細は関連ページからご確認ください。)

環境エコツアーの開催

 生物多様性や自然環境の重要性についての理解を深めるとともに、実践活動の場として環境エコツアーを開催しています。
 開催する年度でテーマや行先は異なっており、令和2年度は「里山の秋を見つけよう」をテーマに、9月に市内のこどもの森公園で、虫を対象にした生き物調査やドングリ拾いと苗づくりを行いました。

こどもの森公園で虫捕りをする様子

里山マルチライブプラン(七沢、荻野地区)

 里地里山は、自然性の高い奥山自然地域と人間活動が集中する都市地域との中間に位置し、集落を取り巻く農地、水路、ため池、二次林と人工林、草原などで構成される箇所です。

 厚木市では、里山の豊かな自然環境を後世に引き継いで行くことを目的に、平成14年度から七沢地区と荻野地区で「里山マルチライブプラン」を実施しています。
地域の活動団体の皆さんと市民ボランティアさんが一緒になって、里地里山を保全していくことで、本来備えている機能(生物多様性の保全、良好な景観、自然体験の場など)が発揮できるよう、取り組んでいます(関連ページ参照)。

荻野地区で、水田にはいって手作業で田植え体験をしている参加者の写真
稲刈りが終わった田んぼに干してある収穫した稲の写真

関連ファイル

関連ページ

この記事に関するお問い合わせ先 inquiry

環境農政部 環境政策課 環境政策係
〒243-8511
厚木市中町3-17-17
電話番号:046-225-2749
ファックス番号:046-223-1668

メールフォームによるお問い合わせ