厚木の生き物を調べる3

更新日:2021年04月01日

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カントウタンポポの花が咲いている白黒写真

カントウタンポポ (諏訪)

 生きもの地図を作ると、なぜか分布が飛び離れた種類がいます。その多くは、情報不足によるものですが、いくら調べても変わらない種類がいます。たとえば、黒地に黄色い縞模様のあるミヤマサナエは、その代表格です。地図上では大きな川沿いと、飛び離れて丘陵地や山地に記録があります。厚木で記録された最高標高は大山山頂の約1250メートル、最低標高は相模川河原の20メートルで、高低差は1,000メートルをこえます。この分布の謎は、その暮らしぶりを調べると分かります。じつは、幼虫が相模川などの大きな河川で生育すること、羽化後の成虫が丘陵地や山地に移動すること、卵を産む時期になると川に帰ることなど、その暮らしぶりが分布に現れた結果だったのです。

タチツボスミレの花が咲いている白黒写真

タチツボスミレ(諏訪)

 似た仲間ヌうしの地図を比べてもおもしろいことが分かります。たとえば、夏の風物詩として有名なホタル類のうち、水中で幼虫が育ち、姿形が似ているゲンジボタル(大型/6月に発生)とヘイケボタル(小型/盛夏に発生)を見てンましょう。すると、明らかにヘイケボタルの方が分布が限定されています。これは、生息環境の情報と組み合わすと理解できます。分布の広いゲンジボタルは、細かい砂のまじった小川に生息し、こうした環境は斜面緑地や丘陵地などの各所で見られます。このことが、広い分布を支えている大きな要因です。一方、ヘイケボタルは水田や湿地などの泥質の水辺で生育し、その分布域は人里近くにあります。したがって、近年の減反や宅地造成などによる影響をうけ、その分布域を狭めているのです。生育する場所が明暗をわけたといってよいでしょう。

樹木に逆さになってとまっているオオムラサキの白黒写真

樹液にきたオオムラサキ(青木)

 オオムラサキは、「緑のまとまり」の大切さを教えてくれます。本種の分布は、市西部の丘陵地から山麓にかけてですが、成虫の食べ物であるクヌギ・コナラ・タチヤナギ(汁吸植物)は市内の広域に分布します。また、幼虫の食べ物であるエノキ(食樹)の分布も同様な分布を示します。市内各所に食べ物があるのに、食べる側の分布が重なっていません。これは市街地などにまばらに食樹などがあっても、生息はできないことの現れです。まとまった緑は、生きものの生息にとって重要なのです。

葉っぱの上にいるゲンジボタルの白黒写真

ゲンジボタル (青木)

 いまも「生きもの戸籍簿」作りは進行中です。さまざまな情報を蓄積することで、厚木周辺の自然のデータバンクとしての機能を充実し、自然共生のまちづくりに役立てたいと思います。

厚木周辺のオオムラサキの分布図

オオムラサキの分布

厚木周辺ヘイケボタルとゲンジボタル の分布図

ヘイケボタル○ と ゲンジボタル● の分布

厚木周辺のミヤマサナエの分布図

ミヤマサナエの分布

厚木周辺のタチヤナギやエノキ、クヌギなどの分布図

タチヤナギやエノキ、クヌギなどの分布

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