大山やふもとの生き物2

更新日:2021年04月01日

山の標高差ごとのセミ類の分布図

標高とぬけがらが見つかったセミの種類
(厚木動植物調査会調べ未発表資料)

3 高い山の生きもの

 大山の北尾根や東側斜面には、小規模ながらもブナ帯があります。ブナやミズナラ、ヤマボウシ、マメグミなどの高い木が森林を作り、その林床にはヤマトリカブトやクワガタソウ、タテヤマギクなどが生育します。こうした森林では、ビンズイや夏鳥のマミジロなどが繁殖し、ルリクワガタ類やエゾハルゼミなどの昆虫類が生息します。キノコにつく昆虫も大型な種類が見られ、サルノコシカケにつくオオキノコムシなどはその代表格です。
唐沢峠周辺のモミ林には大木が多くみられ、壮大な風景です。しかし、ところどころに立ち枯れが見られます。酸性雨や酸性霧の影響ではないかと言われており、林の衰退が心配です。
また、かっては低地にも広く分布したシカが、市街化などにより山地に追いやられ、多く見られるようになりました。大山山頂では、登山者から餌をもらうシカが出没するほどです。増えてしまったシカによる山地植物への影響も大きく、丹沢山地の各所で植生回復のためのシカよけ柵を見かけます。人の都合で追いやられたシカに罪はないので、共存できる道はないものでしょうか。

4 標高と生きもの

 大山山頂から麓までの生きもの分布をセミ類で調べてみると、森林の分布と同様に標高差によって、その分布が左右される様子が分かりました。エゾゼミやエゾハルゼミは、ブナ帯を代表するセミ類ですが、ぬけがらによる調査では、エゾゼミは600メートル程度の二次林上部から、エゾハルゼミは1,000メートル以上のブナ帯で見られました。また、アブラゼミは、高標高での成虫の記録はありますが、発生の証拠となる抜け殻は標高 400メートル以下でしか見つかっていません。このように、標高による分布のことを垂直分布といい、生きものの分布を考える上で重要な要素です。
一方、1,000メートル程度までであれば、標高に関わらず広く分布する種類も見られます。たとえば、コアジサイやコゴメウツギ、マメザクラです。おもしろいのは花の咲く時期がずれることで、麓に比べ山頂は1ヶ月近いずれがあるようです。また、昆虫では発生時期や回数が標高で制約される種類がいます。たとえば、ヒメウラナミジャノメでは、麓では年数回発生を繰り返しますが、山頂付近では夏1回であることが観察されています。

5 緑のつながり

大山周辺には、ツキノワグマやニホンカモシカなどの大型ほ乳類も生息しています。行動範囲が広く、大山を含めた丹沢全体を生活の場としています。また、季節によって丘陵地と山地を行き来するビンズイなどの鳥類も、生活の場が広域です。ミヤマサナエやコオニヤンマ、チョウトンボなどは、幼虫の育つ川や池と成虫が過ごす森林を行き来します。このように生きものの暮らしは、緑のつながりによって支えられています。厚木周辺を一つのまとまりとして考え、自然環境を見つめる目が必要なのです。

開花時期等

種別

4月

5月

6月

7月

8月

コアジサイ

つぼみ

満開

咲き終わり

若い実

満開

満開
咲き終わり

コゴメウツギ

つぼみ
満開

満開

若い実

熟した実

つぼみ

満開

満開
熟した実

マメザクラ

満開

咲き終わり

花ごよみ

  • 上段:大山山頂 1.250メートル
  • 下段:七沢 400メートル以下

(厚木動植物調査会調べ未発表資料)

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