沃土をささえたくらしの道具

更新日:2021年04月01日

日常生活を送っていくのに欠かせない基本的な道具、それが衣食住にかかわる民具です。また、地域において社会生活を営んでいくには冠婚葬祭時などの贈答、人寄せのための道具も必要になってきます。精神的に潤いのある生活を送るためには信仰的要素、そして娯楽の要素も併せ持っていた 「講」の集まりも欠かせないものでした。

1ダイカイ贈答の民具

木で作られたお櫃と、陶器でで作られた容器が白黒で写っている写真

バンダイ、ダイカイと呼ばれる贈答器

 祝儀・不祝儀に贈答される蒸しもの(赤飯)の容器として、神奈川県などの地域で使用されていたのがダイカイです。桶型、樽型、行器型、木腕型とさまざまな形があり、みているだけでも楽しいものですが、どれも使い方は一つ。
今でも葬式で「蒸物料 一荷」などという張り紙をみかけることがありますが、これはダイカイを使用していたときの名残といえます。親子、兄弟など血縁関係の濃い人は一荷といって一組になっている容器二つを贈りました。また、故人に仲人をしてもらったナコウドッコなどは半荷といって容器一つ分を贈ったのです。ダイカイが贈答の容器として、贈答の定量化を促したのか、あるいは逆にダイカイという容器の出現によって量が決まったのか、それは分っていません。また、初産のお祝いに、実家から届けられる餅米の容器になった地域もありました。いずれにしても、ムラの人々のつきあいを知る上で興味深い民具といえます。 

厚木市域の贈答容器分布が明記している地図

厚木市域の贈答容器分布地図

 ダイカイの分布地については、大山の先導師(御師)流布説、厚木の問屋媒介説など諸説ありますが詳しくは不明。ともあれ県央の民具として注目されるものだといわれています。
ダイカイ等は旧家が所有し、祝儀、不祝儀などの際にムラの人が借りにきたという地域もありますが、赤樽、七鉢、ダイカイ、本膳用具などと同様に講中で共有していたところも多くありました。しかし、現在では双方とも使用されることが少なくなり、旧家の蔵、講中の共有蔵の中で眠っていることが多いのが現状です。

小さなお皿や急須、お酒を入れる樽やお椀が複数あり、白黒で写っている写真

飯山志田原講中道具

 一つの講中が所有していた人寄せの道具を展示いたします。どのようなものを、どれだけ所有していたのかをみて下さい。これらの講中道具の中には、ダイカイ、塗りの椀などに加え、結婚式の道具もあります。ハレの日の農村風景をイメージしてみて下さい。

2地神のお姿いろいろ講中の掛軸から

厚木市域における地神で鎧を着て棒を持って立っている男性像や、鉢を持っている女性像が白黒で描かれている絵の写真

厚木市域における地神のお姿

 地神とは、十二天の一つ、大地を象徴する神のことで、その信仰は神奈川県全域から静岡県東部にかけて顕著にみられます。地神は農業の神とされており、社日(秋・春分に最も近い戌の日)、その前日等に講中によって祀られます。同一の信仰を持つ集団のことを講中といいますが、地神講の他にも、庚申、不動、念仏など多くの講があります。
地神像には、男性像と女性像があり、通常、草花や作物の種子を入れた瓶、鉢を手にしています。市域にもいろいろなお姿の地神の軸がみられ、清宝院、教福院(ともに厚木市)、鏡智院(伊勢原市)、等覚寺(綾瀬市)など、今はすでにない修験者の発行になるものも多くあります。
農業の神といわれる地神ですが、その名のとおり「この日は土をいじってはいけない」という禁忌があり、講の人たちは、地神の軸を掛け、飲食を共にしました。この時、米、麦などの穀物を持ち寄り、アズキメシ、ソバなどが出されました。また、この日に無尽を行いましたが、籤で当たった人は農具がもらえるというところもありました。

ワンポイント解説

修験者

 山岳修行によって得た力を用い呪術宗教的活動に従事した宗教者。山に臥して山霊の力を体得することから山伏ともよばれました。『新編相模国風土記稿』によれば、厚木市域の修験寺院は、宝蔵院(愛甲)、清宝院(温水)、熊野堂(厚木)、龍蔵院(飯山)、学禅院(下荻野)など13ケ寺が確認されています。

無尽

 「民間の互助的金融組織」のこと。はじめに参加者の口数と当たりの金品を用意します。定期的な集まりで、参加者の口数に応じた金品の掛け込みを行い、抽籤、入れ札などによって順次金品を受け取ります。一度、当選、落札すると後は掛け金を払い込むだけとなり、全員が当選、落札したところで満了となります。

この記事に関するお問い合わせ先 inquiry

産業文化スポーツ部 文化魅力創造課 文化財保護係
〒243-8511
厚木市中町3-17-17
電話番号:046-225-2509
ファックス番号:046-223-0044

メールフォームによるお問い合わせ