【陳情第3号】「選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書」を国に提出することを求める陳情

更新日:2025年03月18日

公開日:2025年02月28日

陳情第3号 令和7年2月14日受理
議決結果 令和7年3月18日採択

件名

「選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書」を国に提出することを求める陳情

陳情者

横浜市中区日本大通9番地

神奈川県弁護士会
会長 岩田 武司

付託委員会

環境教育常任委員会

陳情の趣旨

  1. 民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めて夫婦同姓を義務付けており、婚姻後もそれぞれが婚姻前の姓を称することを希望する夫婦の婚姻を認めていません。
    しかし、夫婦が同姓にならなければ婚姻できない、とすることは、憲法第13条の自己決定権として保障される「婚姻の自由」を不当に制限するものです。また、氏名は「人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する」(1988年2月16日最高裁判決)ため、「氏名の変更を強制されない自由」もまた、人格権の重要な一内容として憲法第13条によって保障されます。民法第750条は、婚姻に際し姓を変更したくない人の氏名の変更を強制されない自由を不当に制限するものであり、憲法第13条に反します。
    また、同姓・別姓いずれの夫婦となるかは個人の生き方に関わる問題です。現行法上、夫婦別姓を希望する人は信条に反し夫婦同姓を選択しない限り婚姻できず、婚姻の法的効果も享受できません。このような差別的取扱いは合理的根拠に基づくものとは言えず、民法第750条は憲法第14条の「法の下の平等」にも反します。
    加えて、憲法第24条第1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有する」と定め、同条第2項は「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」として、憲法第13条及び第14条第1項の趣旨を反映した、婚姻における人格的自律権の尊重と両性の平等を定めています。これに対し、民法第750条は、婚姻に「両性の合意」以外の要件を不当に加重し、当事者の自律的な意思決定に不合理な制約を課すものです。新たに婚姻する夫婦のうち約95%で女性が改姓している実態に鑑みれば、民法第750条は、事実上、多くの女性に改姓を強制し、その姓の選択の機会を奪うものであり、憲法第24条にも反します。
  2. 国際的には、日本が批准する女性差別撤廃条約や市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)でも、各配偶者には婚姻前の姓の使用を保持する権利があるとされています。国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、2003年7月、2009年8月、2016年3月及び2024年10月の4度にわたり、女性が婚姻前の姓を保持することを可能にする法整備を勧告しています。国際人権(自由権)規約委員会は、2022年11月の総括所見で、民法第750条が実際にはしばしば女性に夫の姓を採用することを強いている、との懸念を表明しました。世界各国の婚姻制度を見ても、夫婦同姓を法律で義務付けている国は、日本のほかには見当たりません。
  3. 1996年には、法制審議会が選択的夫婦別姓制度を導入する「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申しましたが、実現されないまま既に四半世紀以上が経過しています。最高裁判所は、2015年12月16日の判決や2021年6月23日の決定で民法第750条を合憲としましたが、これらの判断は、同制度の導入を否定したものではなく、夫婦の姓に関する制度の在り方は「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」として、国会での議論を促したものです。
    近時の世論や情勢に目を向ければ、官民の各種調査において選択的夫婦別姓制度の導入に賛同する意見が高い割合を占め、多くの地方議会でも同制度の導入を求める意見書が採択されています。また、経済団体等からも、現行制度は個人の活躍を阻害し、様々な不利益をもたらすとして、同様の要望・提言が出されています。私たちの社会で多様性(ダイバーシティー)の尊重や女性活躍推進に向けた取組の重要性が語られる中で、多くの既婚女性が婚姻により改姓を事実上強制され、アイデンティティーの喪失に直面したり、仕事や研究等で築いた信用や評価を損なったりしています。旧姓を通称使用しても、金融機関等との取引や海外渡航の際の本人確認、公的機関・企業とのやり取り等に困難を抱え、通称使用による精神的苦痛も受けている現実があることは決して看過できません。
  4. 国は、この問題が「婚姻の自由」や「氏名の変更を強制されない自由」に関わる人権問題であることを真摯に受け止め、これを速やかに是正すべきです。それは同時に、婚姻を望む人の選択肢を増やすことであり、多様性が尊重される社会、男女共同参画社会の実現につながり、私たちの社会に活力をもたらすものでもあります。
    以上の理由から、夫婦同姓を義務付ける民法第750条を速やかに改正し、選択的夫婦別姓制度を導入すべきと考えます。
    そこで、別紙意見書を採択していただきたく陳情をいたしました。
    そこで、貴議会におきましても、同趣旨の意見書を採択していただきたく、お願い申し上げる次第です。
    多数の議会において意見書を採択していただき、多くの意見書を政府・国会に届けることで法改正につなげることができるものと考えております。ぜひとも御協力いただきますようお願い申し上げます。
  5. なお、案1にての採択を切望するものでございますが、仮に同案にて難しい場合、少なくても国会における積極的な議論をすることについての意見書採択をお願いしたく、案2をお送りいたしますので、お願い申し上げます。
    提出先 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務大臣、内閣官房長官

陳情の項目

「選択的夫婦別姓の導入を求める意見書」を提出してください。

 


 

選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書(案1)

衆議院議長  額賀 福志郎 殿
参議院議長  関口 昌一 殿
内閣総理大臣      石破 茂 殿
法務大臣    鈴木 馨祐 殿
内閣官房長官      林 芳正 殿

 民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、夫婦同姓を義務付けている。その結果、多くの女性が婚姻に際して改姓し、アイデンティティーの喪失に直面したり、仕事や研究等で築いた信用や評価を損なったりするなど様々な場面で不利益を被っている現実がある。
 これらは「婚姻の自由」や「氏名の変更を強制されない自由」などの人権に関わる問題であり、憲法や女性差別撤廃条約・自由権規約に反するものであるから、速やかに是正すべきである。
 旧姓の通称使用を拡大しても、金融機関等との取引や海外渡航の際の本人確認、公的機関・企業とのやり取り等での困難は避けられず、これまで名乗ってきた姓を婚姻後も名乗り続けたいとの希望が叶えられることはない。
 この問題を根本的に解決するためには、選択的夫婦別姓制度を導入するほかはない。選択的夫婦別姓制度の導入は、夫婦が同じ姓を名乗る現在の制度に加えて、希望する夫婦が別姓を名乗ったまま婚姻できる制度を認めるものであり、同じ姓を名乗ることを希望する夫婦の選択を妨げるものではない。それは同時に、婚姻しようとする夫婦の選択肢を増やすことであり、多様性が尊重される社会、男女共同参画社会の実現につながり、社会に活力をもたらすものでもある。
 よって、国に対し、夫婦同姓を義務付ける民法第750条を速やかに改正し、選択的夫婦別姓制度を導入するよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


選択的夫婦別姓制度の法制化に向けた積極的な議論を求める意見書(案2)

衆議院議長   額賀 福志郎 殿
参議院議長   関口 昌一 殿
内閣総理大臣 石破 茂 殿
法務大臣     鈴木 馨祐 殿
内閣官房長官 林 芳正 殿

 民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、夫婦同姓を義務付けている。その結果、多くの女性が婚姻に際して改姓し、アイデンティティーの喪失に直面したり、仕事や研究等で築いた信用や評価を損なったりするなど様々な場面で不利益を被っている現実がある。
 これらは「婚姻の自由」や「氏名の変更を強制されない自由」などの人権や憲法に関わる問題であり、国際社会からも女性差別撤廃条約・自由権規約に反するとの指摘を受けている。とりわけ、国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、2003年7月以降4回にわたり、女性が婚姻前の姓を保持することを可能にする法整備を勧告しているところである。
 政府は旧姓の通称使用拡大の取組を進めているが、旧姓の通称使用を拡大しても、例えば金融機関等との取引や海外渡航の際の本人確認、公的機関・企業とのやり取り等での困難を避けられないなどの限界があり、内閣府も7項目に及ぶ旧姓の通称使用の限界についてまとめている(2021年9月30日開催の男女共同参画会議第3回計画実行・監視専門調査会配布資料参照)。また、経済団体・労働団体等の各種団体からも「通称使用は企業にとってビジネス上のリスクである」などの意見が述べられており、経団連が2024年に会員企業の女性役員を対象に行った調査でも、「「旧姓の通称使用」が可能な場合でも、何かしら不便さ・不都合、不利益が生じると思う」とした者の割合が88%にのぼっている。
 この問題の根本的な解決のためには、国会で夫婦の姓に関する制度の在り方について議論され判断される必要があるが、法務大臣の諮問機関である法制審議会において、選択的夫婦別姓制度の導入などを含む民法の一部を改正する法律案要綱が答申されてから既に四半世紀以上が経過しているにもかかわらず、国会での審議は依然として進んでいない。
 よって、国に対し、多様性が尊重される社会、男女共同参画社会を実現するとの観点を踏まえ、選択的夫婦別姓制度の法制化に向けた積極的な議論を行うよう強く要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

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