大山やふもとの生き物1

更新日:2021年04月01日

公開日:2021年04月01日

 厚木の各所から望む大山は、私たちのふるさとを象徴する一つでしょう。丹沢山地の主要峰で、標高は1250メートルまりです。この山の麓は、飯山や荻野などの丘陵地に続き、大きな緑のまとまりになっています。ここに生息する生きものは、シカやイノシシなどの大型のほ乳類をはじめ、厚木でもっとも多くの生命を育むところです。

1 森林の様子

葉っぱがたくさん多い茂った木の白黒写真

ブナ帯の林(青木)

 大山からその麓に連なる丘陵地の一帯は、森林の切れ目がなく、まとまった緑のかたまりとなった地域です。ほとんどの林は、人の手が加わった二次林で、スギやヒノキの植林地か、コナラなどの雑木林です。大山の東側斜面にある夏緑落葉樹林(ブナ帯)や、唐沢峠のモミ林などの自然林は、市内での分布はきわめて限られています。

2 雑木林とその周辺に生まれる生きもの

葉っぱがギザギザでたくさんの小さな蕾をつけたジュウニヒトエの白黒写真

ジュウニヒトエ

 大山の中腹標高700メートル以下から丘陵地には、雑木林とスギ、ヒノキの植林地が広がっています。また、山麓や丘陵地の谷間には、細流やため池から取水した水田(谷戸田)などが見られます。ここは人が林の管理を長年してきた里山で、人と生きものの関係が良好に保たれ、共存する地域です。その一つの地域を資料館が調べたところ、3千種をこす生きものが記録され、その豊かな自然があらためて証明されました。
雑木林では、林の中に生えるジュウニヒトエやギンランなどの林床植物や、刈り込みされた明るい空間に生育するヤマユリなどの陽性の植物が見られるのが特色です。また、林の縁では、クサギやミズキ類、コナラなどが四季折々に花をつけ、カラスアゲハなどの多くの昆虫を支えています。このような林では、大木となる木も多く、幹に穴の開いたような「うろ」をよく見かけます。こうした「うろ」には、トゲアリ、ニホンミツバチなどの昆虫やムササビやフクロウ類などの重要な営巣場所となっています。また、幹からしみ出た樹液は、オオムラサキやスジクワガタなどの多くの昆虫が食べ物として利用しています。 

樹液を吸いにきた大きな角のカブトムシの白黒写真

樹液にくるカブトムシ

 死体や落ち葉などを土に戻す生きものの活躍も見逃せません。動物の死体に集まるシデムシ類やハネカクシ類、ふんに集まるセンチコガネ類、キノコなどの菌類は倒木や落ち葉を分解しています。生命のつながりを円滑にする生きものの存在は、雑木林が豊かである証拠です。

艶がある一匹のガムシの白黒写真

ガムシ

 雑木林周辺の谷戸田やため池には、クロゲンゴロウやガムシ、チョウトンボ、ミズニラ、イヌタヌキモなどが生息します。雑木林の縁を流れる細流には、カワトンボ類やコサナエ、イモリなどが見られます。こうした水生生物は県下で稀となっており、厚木の分布はきわめて貴重な存在です。

草にとまっている羽の縁が黒いチョウトンボの白黒写真

チョウトンボ

 雑木林は、落ち葉かきや枝打ち、伐採、植林などの人の手が加わらなくなると、次第に薄暗い林になってゆきます。こうした林からは、多くの生きものが姿を消し、特定の種類しか生息しなくなってしまいます。農業形態の変化により、雑木林の荒廃が県内各所で見られ、厚木でも良好な雑木林は稀になりました。このことは、宅地開発などによる大規模な雑木林の消失と同じぐらい深刻な問題です。

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