【陳情第11号】「再審法改正を求める意見書」を国に提出することを求める陳情
陳情第11号 令和7年8月7日受理
件名
「再審法改正を求める意見書」を国に提出することを求める陳情
陳情者
横浜市中区日本大通9番地
神奈川県弁護士会
会長 畑中 隆爾
付託委員会
総務企画常任委員会
陳情の趣旨
やってもいない犯罪で有罪とされる「冤罪」は、犯人とされた方や御家族の人生を破壊し、時には生命さえ奪いかねない国家による最大の人権侵害です。このような冤罪被害者を救済するための制度が「再審」であり、その手続を定めた法律のことを「再審法」と呼んでいます。具体的には、刑事訴訟法第四編「再審」がこれに当たります。
しかし、現行の再審法は、75年以上改正されないままで、再審請求手続の審理の在り方に関する規定はほとんどなく、裁判所の広範な裁量に委ねられている状況にあります。このように、「再審ルール」が存在しないことから、事件を担当する裁判官によって再審請求手続の審理の在り方に大きなばらつきが生じています。
その中でも、とりわけ大きな問題となっているのが、証拠開示の問題と再審開始決定に対する検察官の不服申立ての問題です。
過去の冤罪事件では、警察や検察庁といった捜査機関の手元にある証拠が、再審段階でようやく明らかになって、それが無罪を導いたという例が多くあります。
しかし、現行法では、そのような証拠が提出される制度的保障がありません。捜査機関に証拠を開示させることを定める明文の規定がなく、裁判所の訴訟指揮と検察官の対応次第となっています。その結果、無実を示す証拠が裁判所に提出されず、冤罪被害者が救済されないことも起こり得ます。
また、一旦裁判所が再審開始決定を行った場合であっても、検察官がこれに不服申立てを行うことができるので、それが冤罪被害者の速やかな救済を妨げる原因となっています。
現在の再審制度は、裁判のやり直しをするか否かを審理する再審請求手続と、やり直しの裁判で改めて有罪・無罪を判断する再審公判の二段階の手続となっています。つまり、再審請求手続というのは、裁判のやり直しをするか否かを決定する前裁きの場にすぎません。
したがって、再審請求手続において再審開始決定が出た場合には、速やかに再審公判の手続に移行し、改めて公開の法廷において有罪・無罪の判断を行う審理を行うべきであって、再審開始決定それ自体に対する不服申立ては制限されるべきです。
再審請求を行った方の中には、結果を知ることなく亡くなった方もいますし、相当の高齢となる方もいます。冤罪被害を申し出た方の救済には、気が遠くなるほどの時間がかかっているのが実情です。
記憶に新しいところでは、2024年9月26日、静岡地方裁判所において袴田事件の再審無罪判決が出され、その後確定しましたが、実に事件発生・逮捕から58年、死刑判決の確定から44年の歳月がたってのことでした。
また、最近では、2025年7月18日、名古屋高等裁判所金沢支部において福井女子中学生殺人事件の再審無罪判決が出され、確定しましたが、これも、逮捕から38年以上が経過して、ようやく冤罪が晴れたものでした。
日本弁護士連合会は、2019年10月4日開催の人権援護大会において、「えん罪被害者を一刻も早く救済するために再審法の速やかな改正を求める決議」を採択し、再審請求手続における全面的な証拠開示の制度化と再審開始決定に対する検察官の不服申立て禁止を含む再審法の改正を求めました。
2024年3月11日には、超党派の国会議員により「えん罪被害者のための再審法改正を実現する議員連盟」が結成され、現在では全国会議員の過半数が加盟するに至っております。
そして、本年6月18日には、議員連盟がまとめた法案が衆議院に提出され、秋の臨時国会に向けて継続審議の扱いとなりました。その法案には、再審請求審における証拠開示の制度化と再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止という2つの重要な骨子が含まれております。
他方、法務省の下に法制審議会刑事法(再審関係)部会が開かれることとなりましたが、証拠開示や検察官の不服申立ての禁止に関し後ろ向きの意見が出されており、また、細かい論点を検討項目としていて、法案化まで相当の期間を要することも明らかです。冤罪被害者の救済のためには、一刻も早く重要な骨子についての法改正を成立させる必要があります。
そのためには、多くの国民の声により後押しが必要であり、全国の地方議会において再審法改正を求める意見書を採択し、広範な世論を形成していくことは、何より重要な活動と考えられます。
本年7月10日の時点で、すでに720を超える地方議会で再審法改正を求める意見書が採択されています。その流れに続くべく、貴議会におきましても、ぜひとも同趣旨の意見書を採択していただきたく、お願い申し上げる次第です。
陳情事項
1 再審請求手続における証拠開示の制度化
2 再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止
提出先
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務大臣
陳情の項目
別紙「再審法改正を求める意見書」を採択し、関係行政機関に提出してください。
再審法改正を求める意見書(案)
2025年(令和7年) 月 日
衆議院議長 額賀 福志郎 殿
参議院議長 関口 昌一 殿
内閣総理大臣 石 破 茂 殿
法務大臣 鈴木 馨祐 殿
厚木市議会
議長 瀧口慎太郎
冤罪は、国家による最大の人権侵害である。冤罪被害者の人権救済は、我が国にとってはもちろん、地域住民の生命・財産を守る義務を有する地方自治体にとっても重要な課題である。
冤罪被害者を救済するための制度として「再審」があるが、その手続を定める法律(刑事訴訟法第四編「再審」)には、再審請求手続の審理の在り方に関する規定がほとんどないため、再審請求手続の審理の進め方は、事件を担当する裁判官によってまちまちであり、審理の安定した進行が制度的に保障されていない状況にある。
その中でも、とりわけ大きな問題は、証拠開示の問題と再審開始決定に対する検察官の不服申立ての問題である。
過去の多くの事例では、再審段階で明らかになった捜査機関の手元にある証拠が、冤罪被害者の救済の大きな原動力となっている。
したがって、冤罪被害者を救済するためには、捜査機関の手元にある証拠を開示させる別 紙仕組みが必要であるが、現行法にはそれを定める明文規定が存在せず、裁判官の訴訟指揮や検察官の対応次第となっており、事件ごとに証拠開示の範囲に大きな差が生じているのが実情である。このような格差を是正するためには、証拠開示のルールを定めた法の制定が必要である。
また、再審開始決定がなされても、検察官がこれに不服申立てを行うことにより、いたずらに審理が長引き、結果として冤罪被害者の速やかな救済が妨げられた事例も多く生じてきた。
しかし、再審開始決定は、裁判をやり直すことを決定するにとどまり、有罪・無罪の判断は再審公判において改めて行われるのであるから、再審開始決定という言わば入り口の判断に対して、検察官の不服申立てを認める必要はない。
よって、冤罪被害者を早く確実に救済するために、再審請求手続における証拠開示の制度化及び再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止を含む再審法の速やかな改正を強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
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更新日:2025年09月01日
公開日:2025年09月01日